「K!!」
これは書いていいのかよく分からないのです。
でも書きたいのです。
だから読んだ人はココだけの話にしてください。タノミマス。
明けておととしの秋のある日のこと。門のところに
「スンマセーン!」
という声
見ると、ハンチング帽にサングラス、太い(金)のネックレスにブレスレット、シマシマの上着にオーストリッチのセカンドバッグをこわきにかかえた小柄な怖そうなオジサンが立っているではありませんか。
あぁ、この場合誰が矢面に立つのかというと、
やっぱり私しかいないよなァ〜、としみじみと納得して、
「ハイ、なんのご用でしょうか?」
と聞くと、なんと子どもを幼稚園に入園させたいとのこと。
「西幼」にたどりつく前に別の幼稚園に行ったら、
やれ「途中から入ると慣れにくい」
やれ「以前も慣れないで大変なことがあった」
などと言われ、結局断られてしまったとのこと。
でも、どうしても金のネックレスやシマシマの上着に目が行っちゃう私ですが、話を聞くと、なんだ普通のお父さんなのネ。子供を入園させたいと願うお父さんなのネ。
他で断られたと聞くとがぜん入園させたくなる私は、
「大丈夫よお父さん、入園できます。ところでお母さんはどこ?」
聞くと、断られたショックで、今、電信柱の影で泣いているとのこと。
「呼んでよ!大丈夫よ!」
お父さんオーストリッチのバッグをかかえなおして、
「オーイ、オーイ」(お茶かっ!?)
呼んでも、来ない。
私は上ばきのまま道路に出て迎えに行くと、ほんとうに電信柱の影から女の人が泣きながら出てきました。
思わず肩を抱いて
「大丈夫よ。幼稚園入れるからね。」
と何度も話しました。
ついてきた男の子「K」は、嬉しそうにすべり台をのぼりはじめ、幼稚園入園が決まったのです。
お母さんは韓国の方でしたが、言葉もどんどん上手になり、子どもも友達がすぐできて(慣れないなんてウソ!)楽しく過ごしていました。
でも、Kのママはビザ切れで申請中だったのよね。
金のネックレスのパパがグズグズしてるから、私はパパに「ちゃっちゃとせんか!!」とはっぱをかけていたのです。
ママいわく「パパはたみこさんには弱いです。言うコト、聞きマス」と言ってたから。
でも申請から許可までは大変時間がかかること、どうしても引越しなければならないことなどが急に浮上してきて、パパはもう、「心機一転新しい土地へ行く」と言って住むところを探している、とママが涙ポロポロ流しながら話しに来ました。
エッ!?
だってKはこの間年長の歌劇「オキクルミ」で力強く歌い、
みんなに感動を与えたばかり。
小学校にも頼んだし、
年長みんなで元気に元気に前を向いて小学校へ!!
というこのときだよ!!
必死で止めましたが、結局、 ママはパパのところに行く、 と決意をのべました。
お母さんの不安な気持ちも知っているし、
Kもこの幼稚園からはなれたくないハズ!
退園させたくない! との気持ちでいっぱいでした。
でも、私は知ってるのよね。
パパもまた、在日の2世か3世で、Kのハルモニたちは、もしかしたら日本に無理矢理連れてこられて、名前を二つ使い分けたりしながらようやく、ようやく生きてきた人なのかもしれない。
そうやって苦労して苦労して、いろいろイヤになっちゃったのかも・・・。
K、本当に行っちゃうのか。
ママがその決意をした日、年長さんは柴又の帝釈天にあそびに行きました。気持ちのせいか、足が痛いとひきずっているKが心配で
「茂夫さんの車で帰る?」
ときくと、必死に
「いい! いい! みんなといっしょがいい!」
その顔を思い出すたびに私は泣いています。
ずっと泣いています。
K
卒園式にはきっと来てね。
別れを惜しむまつ組みのみんなの声がいつまでもいつまでも響いています。 |