「 酒とバラの日々 」
3月20日、晴れやかな笑顔一杯に40名の子どもたちが卒園していきました。
もうすぐ一年生。
幼稚園でつけた力でしっかり前を向いて歩いて行ってほしいです。
ずっと心から応援していきます。
あなた達をこんなに愛した私たちがここにいること、どうぞ忘れないでください。
ずっとずっと前の卒園式の日を思い出します。
4歳で入園してきたYは、いつもどこか不安げな顔をして、私たち保育者はいつでも心を開いてもらえるようにと接していました。
送っていくコースにママが待っていることは少なく、お家まで行くと、ママがいなくて、メモを残して待ったけれど、暗くなってから「頼まれた」というヒトが迎えに来た。なんてことも重なり、私は「どれどれ、ちょっくらママとおしゃべりでもしてみよう」とお宅までノコノコ出かけていきました。
大きなお家の広いお部屋には化粧品類と、なぜか通帳が散乱していて(う、うらやまし〜〜ぃ!!)、ママは私の訪問をいぶかしがることもなく、子ども達が夫の実家(近所の)に遊びに行っていること、夫が一生懸命働いてくれることなど、機嫌良く話してくれました。
Yがなんとか楽しい幼稚園時代を過ごせるよう、ママと仲良しになりたいと思った私も、精一杯ニコニコおしゃべりしていました。
するとママが、
「センセ! これどう?」
と、何か飲み物が入ったビンのようなものを出してきました。
ママには、お酒を飲み過ぎる、だからお迎えに来られなかったりする・・・・というウワサがちょっとあったのです。
本当のところは分かりません。
ただその飲み物を出されたときには、
「もしかしたら、ん? お酒か?」と思いました。
一瞬返事をするのに迷いました。
「酒なんて飲んでるんじゃない!!」
と怒鳴ったってしょうがないし、
もおいっそ一緒に飲むか!?
どうする?どうする?ワタシ!
するとその時です!
電話が鳴りました。
パパが、ママの居場所を確認する。
子どもの様子を聞くついでに、ママの様子を確かめる。
そんな内容の電話でした。
(パパは子どものこと、ママのこと、心配していたのです)
電話を切ったママは、その飲み物を指差して笑いました。
「センセ! これ、麦茶! 麦茶!」
と、さっさとしまっていました。
心からほっとする思い。
そして、仲良くなったママと私でした。
相変わらずママはちょっと頼りなかったけれど、なんとかかんとか、様子を見ながら、Yには笑顔が見られるようになりました。
そして迎えた卒園式の日には、パパが来てくれました。
「ママは?」と聞くと「謝恩会には来る」と帰って行きました。
式後にお母さん方が開いてくれる、謝恩会。
親子で食事しながらの楽しいひと時をすごすことになっています。
Yだけママが来なかったらどうしよう・・・
と私は門のところで待ちました。
もうみんなが席に着く頃、ママがやって来ました。
「ア〜よかった。ママよく来てくれたね。Yちゃん待ってるよ」
と駆け寄ると、まっすぐ水道のところに行き何度かうがいをしたり水を飲んだり。
(子どもの卒園が嬉しくてゆうべ飲み過ぎた?)
しばらくそばにいて、心ゆくまで水を飲んで、私に肩を押されて、謝恩会会場に入りました。
ママの登場でほっとした笑顔のY。
そんなママはお花が大好き。
よくお花の話をしました。
小門の脇にあるバラ。
真っ赤なバラ。
あれはたぶん、そのママが「センセ、バラは簡単に根づくよ! ここに植えてみるよ」と差して行ってくれたのかもしれない。
毎年、1輪か2輪咲いてくれる(気取って門のところにアーチみたいにしようと思ったけど、トゲが気になるし、たくさんは咲かないし、中途半端っていえば中途半端な)真紅の大輪のバラの花。
卒園式の頃になるといつも思い出します。
バラが咲くと、元気にしてるかなと気になります。
旧まつ組さ〜ん 卒園おめでとう!
なんかあったらいつでも来てね。
困ったことがあったら言ってね。
いつでもどこでも飛んで行くからね〜!
大好きだよぉ〜!
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